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JA7DPH(アマチュア無線局)は昭和40年8月八戸市にて開局しました。

Aoba-ku Sendai-city 989-3204 JAPAN
Loc:QM08 ITU:45 CQ:25 JCC:0601

9R-59修理の顛末記RUIT

懐かしの 9R-59 part-1(米国Lafayette社 HE-30 通信型受信機)
(画像にマウスを置くと画像が切替り、さらにクリックで 回路図pdf へジャンプします。)


 昭和40年春、「ラジオ少年」真っ盛りの高校2年時でしたが、無線好き仲間が集まり学校内にアマチュア無線クラブ局(後にJA7YEGで免許)を立上げることを画策。
 学校からの正式許可を待ちきれず、夏休みでほぼ休校状態の校舎屋上に勝手に忍び込み、7MHzフルサイズ・ダイポールANT張りを強行し無事完成。ANT張り中に雷が鳴りだし、コネクタ接続作業時に時々火花が飛んだり、ビリビリ感電した記憶がよぎります。
 また、予算配布の裏付けもないまま、市内の無線機屋・店長さんを説得し、無線機器を次々と部室に搬入。予算が少なかったため、割安なキットを購入し組み立てることとなりましたが、その時購入したキットがTORIO(旧春日無線)の送受信機でした。
 ちなみに、受信機は9R-59、送信機はTX-88Aでした。キットの組立は私が担当しましたが、メーカー製キットによる製作は初めての経験でした。それまでは新品を買うお金もなく、古いラジオからの部品取り再生品による修理が主でしたから、真新しいパーツの匂いにすごく興奮したことを覚えています。
 あれからすでに50年の時が経ちました。9R-59をシャック棚の最上部に飾ってみましたが、いろいろと懐かしい思い出がよみがえります。もちろん完動品で、外装や内部も綺麗で驚くほどの良品です。(譲ってくれた方に感謝です。)
PDFファイル ⇒ TORIO 9R-59 回路図

シャーシー上面の配置状況(糸張りダイヤル・フライホイールが懐かしい)
(画像にマウスを置くと画像が切替ります。)


 譲ってもらった受信機は LAFAYETTE HE-30 で 9R-59 の輸出ブランド版です。 AC電源は100V仕様で、117VへはSWで即切り替えが可能です。 各バンドの受信状況は良好で、Qマルチやバンドスプレッドなど、ほぼ完ぺきな動作をしています。
 当時(s30年代後半〜s40年代)は高1中2(高周波1段中間周波2段)がアマチュア無線用受信機の主流でしたが、とても高価でキットと言えども高校生が買えるような受信機では有りませんでした。

シャーシー裏面の配線状況 (配線がとても丁寧)
(画像にマウスを置くと画像が切替ります。)


 思い出の受信機/9R-59は真空管にほのかな明かりを灯しながら、NHK第一ほかのラジオ放送をクリアに受信しています。真空管が作り出す音は柔らかくて何とも言えません。
 もちろん、3.5MHzや7MHzなどのアマチュア無線周波数帯も受信できていますので、「ラジオ少年」の昔に戻り、再調整・オーバーホールし、受信性能の向上にチャレンジしたいと思っています。
【定 格】※単位は昔風にc(サイクル)
@ 周波数帯
  A;550〜1,600kc B;1.6〜4.8Mc C;4.8〜14.5Mc D;10.5〜30Mc
A 中間周波数 455kc
B 付属回路 Qマルチプライヤー兼BFO・ANL・AVC-MVC
C 感 度 10μV(10McにてS/N20dbの入力時)
D 選択度 -60db(1Mcにて±10kc)
E 出力電力 1.5W
F 消費電力 50VA、50c/sまたは60c/s
G 使用真空管(9球)
  6BA6(高周波増幅)、6BE6(混合)、6BE6(局部発信)、
  6AV6(Qマルチプライヤー、BFO)
  6BA6×2(中間周波増幅)、6AV6(検波、低周波増幅、ANL)、6AQ5(出力)
  5Y3/5CG4(整流)

●● 北京放送が聞こえますので【ご試聴】ください。●●
受信状況は良好です。 ( 短波放送/AM 放送受信中! )【BGM】

 昔々、皆さんの中にも海外の短波放送を聞いたことのある方がいると思います。今夜は久しぶりに「北京放送」を7.325MHzで受信してみました。

 電波伝搬・電離層のコンディションも良く受信感度明瞭です。とても50年前に発売された受信機(真空管式)とは思えません。 (-。-)y-゚゚゚

懐かしの 9R-59 part-2
(画像にマウスを置くと画像が切替り、さらにクリックで拡大します。)


 昭和40年5月、ゴールデンウイークだったろうか、工高のクラブ局開局に向けて無線機作りが始まりました。受信機は9R-59、送信機はTX-88A、いずれもTORIO製のキット組み立てでした。

 キットの組み立ては私が担当しましたが、組み立て作業の基本、ハンダ付けは小学生時代からの練習成果で?得意なものでした。
 思い起こすと、電気科1年時の実習でハンダ鏝をした記憶が有りますが、コテ先〜ヒーター、抑えの金具に至るまですべてが手作り作業でした。熱量が60ワットもあり、ラジオ作りには不向きな位の大きな代物でしたが、その出来栄えが実習教科の評価点となる訳でした、、。
 そもそも、キット作りはさほど無線の知識は必要とせず、回路の理屈が分からずとも組み立てられるようになっていましたので、プラモデルの組み立てとあまり変わらないのです。
 しかし、完成後に電源スイッチを入れる時のドキドキ感と、スピーカーから何やら微かな音が聞えた時の感動は、何とも言えない気持ちになるものです。それは、プラモデルが完成した時とは全く異質の感動でもあります、、。
PDFファイル ⇒ TORIO 9R-59 回路図

9R-59ケース内部の状況
(画像にマウスを置くと画像が切替ります。)


 そして今もなお、あの時組立てた9R59とTX88Aはどうなっているのかな、、と保存されている可能性も無い無線機を思い起こしながら、ヤフオクで仕入れたジャンク品の修理を行っています。
 2015(h27)年3月、 LAFAYETTE HE-30 (9R-59 の輸出ブランド版)の修理とトラッキング調整を行いましたが、保存の程度はかなり良好な状態でした。
 修理調整後の受信機動作はほぼ完ぺきなものでしたが、同時期にジャンク修理目的に購入した、9R-42J(1958年)JR-599(1969年)との置き場所に困り、修理完了と同時に手放してしまいました。買値と運送料金を加味すると、手間暇かけて修理調整後でも大幅な赤字は覚悟の上でしたが、修理品を使ってくれるマニアが居ることが励みにもなりました。
 そして、2021(R3)年2月、ふたたび9R-59のレア品を発見!、丑年生まれ(72歳)の記念?にまたしてもジャンク品でしたが、ヤフオクにて落札、昔の「ラジオ少年」に戻り、まずは掃除機と歯ブラシを使ってのホコリ汚れ掃除〜修理再調整にと、連日連夜の格闘が続くこととなりました。ジャンク修理という趣味?なんです。
【定 格】※単位は昔風にc(サイクル)
@ 周波数帯
  A;550〜1,600kc B;1.6〜4.8Mc C;4.8〜14.5Mc D;10.5〜30Mc
A 中間周波数 455kc
B 付属回路 Qマルチプライヤー兼BFO・ANL・AVC-MVC
C 感 度 10μV(10McにてS/N20dbの入力時)
D 選択度 -60db(1Mcにて±10kc)
E 出力電力 1.5W
F 消費電力 50VA、50c/sまたは60c/s
G 使用真空管(9球)
  6BA6(高周波増幅)、6BE6(混合)、6BE6(局部発信)、
  6AV6(Qマルチプライヤー、BFO)
  6BA6×2(中間周波増幅)、6AV6(検波、低周波増幅、ANL)、6AQ5(出力)
  5Y3/5CG4(整流)

●● アマチュア無線の交信が聞こえますので【ご試聴】ください。●●
受信状況は良好です。 ( 3.5MHz SSB受信中! )【BGM】

 再調整後の動作状況は良好で、全バンドとも受信出来ています。ジャンパー線をアンテナ代わりに接続して3.5MHzや7MHzのCW・SSBを受信していますが、全く問題なく動作しています。

 電源スイッチを入れてから暫くしてから、“ブゥオ-ン”いう音がスピーカーから流れてきますが、多少のハム音を伴った音声や音楽から、セピア色の郷愁を感じさせられます。
 古い無線機の類いはそろそろ断捨離が必要な年代に差し掛かりつつありますが、昔を思い出させてくれる懐かしの“9R-59”をもう少し手元に置いておこうと考えています。 (-。-)y-゚゚゚

懐かしの 9R-59 part-3
(画像にマウスを置くと画像が切替り、さらにクリックで 回路図pdf へジャンプします。)



 当時の資料によると、1946年有限会社春日無線電機商会は設立され、1957年に日本メーカーとして初めて、FMチューナー「FM-100」の輸出を開始したとあります。
 最初の製造販売は、1952年に発売された第1号機、6R-4Sという受信機だった様ですが、Hallicrafters S-38というアメリカ製の受信機を模倣したデザインと回路構成でした。
 同年に再開されたばかりのアマチュア無線家には大人気で、その後さらに高性能な9R-4シリーズ、1958年には、アマ無線家向けの9R-42Jの発売へと繋がります。
 1960年には、トリオ株式会社に社名が変更され、この年に9R-59が製造販売されました。当時のパンフレットには、9R-59の完成品は¥33,000、 球無しオールキットは¥18,000との記載があります。高卒初任給が1万円に満たない当時としては、まさに高嶺の花の存在でした。
 1965(s40)年夏、幸運にも工高のクラブ局の予算申請が承認され、受信機 9R-59、送信機 TX-88Aのキットを購入する事が出来ました。組み立ては私の担当で放課後は階段下にある部室に閉じこもり、毎日夜遅くまで夢中になって製作した記憶が有ります。
 あの当時に製作した無線機は今どうなっているのかが気になりますが知る由も有りませんt、、。既に半世紀以上も過ぎた高校時代を思い起こしながら、3台目の修理となる9R-59のメンテナンスを終え、記録を写真の形で残すことにしました。
PDFファイル ⇒ TORIO 9R59 回路図

シャーシー上面の配置状況(天板には開閉できる放熱用の蓋が付いています。)
(画像にマウスを置くと画像が切替ります。)


 9R-59の登場は1960年、この時代のアマ無線用受信機には、まだプロダクト検波は採用されておりませんでした。
 1960年代前半は、まだまだSSBは特殊というか、ほとんどのハムは手にすることの無かった電波形式でした。
 本格的なSSBの普及は1968年くらいからで、まだまだAMが主流、オール真空管時代で、送信用にはST管のUY-807(10W)が全盛期の頃でした。
【定 格】※単位は昔風にc(サイクル)
@ 周波数帯
  A;550〜1,600kc B;1.6〜4.8Mc C;4.8〜14.5Mc D;10.5〜30Mc
A 中間周波数 455kc
B 付属回路 Qマルチプライヤー兼BFO・ANL・AVC-MVC
C 感 度 10μV(10McにてS/N20dbの入力時)
D 選択度 -60db(1Mcにて±10kc)
E 出力電力 1.5W
F 消費電力 50VA、50c/sまたは60c/s
G 使用真空管(9球)
  6BA6(高周波増幅)、6BE6(混合)、6BE6(局部発信)、
  6AV6(Qマルチプライヤー、BFO)
  6BA6×2(中間周波増幅)、6AV6(検波、低周波増幅、ANL)、6AQ5(出力)
  5Y3/5CG4(整流)

ダイヤル文字盤の清掃(9R-59独特の横スライドの文字盤が懐かしい)
(画像にマウスを置くと画像が切替ります。)


 昭和の時代はST管を使ったラジオ、5球スーパーが全盛期でした。私がラジオ作りに興味を持った頃のダイヤルは横スライドの文字盤で、チューニングはマジックアイで確認する形式が一般的でした。
 スーパーとか、マジックアイとか、横文字に何やら不思議な意味合いを感じながら、ハイカラ?な言葉に惑わされながら、「ラジオ少年」を過ごしました。
 当時の田舎ではなかなか手に入らなかった、「初歩のラジオ」とか「ラジオ製作」といった雑誌を購入し、擦り切れるほどに何度も読み返したものでした。
 今回メンテナンスした9R-59は年代物の割には錆や汚れも少なく保存状態も良いものでした。しかし、ダイヤルのプーリーや糸張りの状態があまり良くなく、文字盤などにも汚れが目立っていましたので、丁寧な清掃と調整を行いました。
 特に、文字盤の清掃には最新の注意が必要です。うっかりアルコールで拭いたりすると文字盤の文字が消えかかったりしかねません。水拭きかOAクリーナーが無難と思います。
 ダイヤルの糸張り用糸は、その昔は三味線の糸を使ったことも有りましたが、今はホームセンターの店先にて、釣り糸や園芸用など代替品も手に入ると思います。
 毎回そうですが、修理や調整作業の途中にふと手が止まり、少しのパーツにもいろいろな思い出と記憶が懐かしく蘇り、とても不思議な気持ちになります。v(^_^)v

Sメーター & ダイヤル文字盤(45φ丸型メーターのオリジナル文字盤が懐かしい)
(画像にマウスを置くと別機種/H10の文字盤画像に切替ります。)


 清掃後のダイヤル文字盤はとてもきれいでダイヤル走行もスムーズに行えるようになりました。
 同じ機種を何台か手がけているうちに、その機種特有の難点、不具合となりやすい弱点にも気付きますが、9R-59のダイヤル機構にはプーリーからの糸掛け外れと空回りに陥りやすい欠点が有ります。
 これは、ダイヤルシャフトが細い事、糸掛けが回るたびに移動する事によるものですが、手製の糸掛けガイド(ビニル被覆鉄線)やシャフトのヤスリ掛け(摩擦増大)で改善させることが出来ました。
 この事は 9R-42J にも言えることで、同じような対策を講じて改善させることが出来ました。
 それにしても、プーリーと糸掛け、バリコンの組合せで横行ダイヤルの周波数が直読できるカラクリは、安価でもあり素晴らしいアイディアだと思います。
 分解清掃の途中で、元に戻せないくらいの糸掛けの仕組みは、簡単でもあり複雑でもあり、謎解きあや取りの世界でした、、。 (^_^;)

●● 「NHK-R1放送が聞こえますのでお聞きください。●●

受信状況は良好です。( NHK第一放送/AM 放送受信中! )【BGM】

 今回、修理調整を行った9R-59は全バンドともトラッキング調整を行いほぼ初期の性能状態に復活させることが出来ました。
 ただ残念ながらQマルチプライヤー兼BFOの機能は復活させることが出来ませんでした。コンデンサの容量抜けによるLC回路の不整合、発振不良と思われますが、部品調達を諦めAMのみのラジオ受信機として使用する事としました。
 AM放送の受信状況はとても良好で、ミニコンポ用の室内アンテナ(ループ)でも十分受信出来ました。
 ハム音も無く、とてもクリアな音を再現できています。まずは、NHK第一放送の受信状況をお聞きください。


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