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JA7DPH(アマチュア無線局)は昭和40年8月八戸市にて開局しました。

Aoba-ku Sendai-city 989-3204 JAPAN
Loc:QM08 ITU:45 CQ:25 JCC:0601

9R42J修理の顛末記RUIT

HE-10/9R4J修理 part-1 (米国Lafayette社 HE-10 通信型受信機)
(画像にマウスを置くと画像が切替り、さらにクリックで回路図pdfへジャンプします。)


 米国 Lafayette 社の、HE-10 (TRIO 9R4J の輸出版)通信型受信機を、ネットオークションで落札出来ました。そして、ほんのり点灯する真空管のヒーター熱を感じながら、受信感度の再調整を行いました。この半世紀、色々な無線仲間が触れたであろう、昭和の「名機9R4J」と、じっくりと対話できました。
 昭和40年の夏休み(私は工高の2年)、アマチュア無線を開局している学校の先輩(既に社会人・20代後半)のシャックを仲間ととも訪問。この受信機が、木製机の上で輝いていました。
 春日無線工業(株)(その後 TRIO〜現KENWOOD )が、昭和33年頃から製造発売した「名機9R-42J」です。真空管の構成は、高周波増幅⇒6BA6、ミキサー兼局発⇒6BE6、中間周波増幅⇒6BD6x2、音声増幅兼ANL⇒6AV6、音声出力⇒6AR5、BFO⇒6AV6、整流⇒5Y3、というアマチュア無線用受信機(AM、CW)でした。
 キットも販売されていたようですが、当時の価格は、完成品で2万4,500円もしたようです。それはそれは、とても高価な受信機だったと思います。
 ちなみに、昭和42年入社の私の初任給は7千円ほどでしたから、月給の3ヶ月分超ですね。(^_^;)
 その無線機は、私が小学児童生だった昭和30年代の頃、今から57年も前に製造発売され、海外にも輸出されていた、日本最古のアマチュア無線機だったのですね、、。
PDFファイル ⇒ TORIO 9R-42J 回路図

Sメーター(45φ丸型メーターのオリジナル文字盤が懐かしい。))
(画像にマウスを置くとダイアル文字盤の画像に切替ります。)


 私が「ラジオ」に興味を持ち始めたのは昭和32〜33年頃(小学3年)です。当時はST管5球スーパー、マジックアイ (同調視認) 付が全盛の頃でした。その後キット作りをする兄の脇で見よう見まねのラジオいじり、小学6年ごろには実体配線図を頼りに理解も出来ないまま、だだただ弄繰り回していました。
 この受信機/9R-42Jは昭和33年頃からの製造販売ですから、私が小学4年頃に作られていたのですね。この受信機を目の当たりにしたのは昭和40年/工高2年の時、すでに販売から7年も後のこと、その性能と恰好良さに驚き興奮した事を今でも覚えています。
 推測ですが⇒その頃は、電圧計・電流計は値段も高価で、販売している店も少なく、簡単に入手できる品物では無かったのではないでしょうか、、。小型の45φ丸型メーターなど、まさしく貴重品の類だったと思われます。

 そのような時代に、春日無線の設計担当者は、本機のオリジナルとしての製品化に拘ったのではないかと勝手に思いを巡らしています。
 文字盤に記載されている“1959”の文字は製造年を表していると思われます。西暦1959年は昭和34年、今から56年も前のことですが、米国の大手無線機メーカに対抗し、開発したであろうの気概を感じます。
 その頃のSSB受信は、BFOによりビートを掛け、再生受信していましたが、本品はまさに時代を代表する高級受信機だったのでしょうね。
 大した発振器(OSC)・測定器(周波数+LEV計)も持合せていないため、耳感とテスターのみによる、勘頼みの再調整を施しましたが、 各バンド受信状況は良好で、BFOやバンドスプレッドなど、ほぼ完ぺきな動作をしています。v(^_^)v

シャーシー上面の配置状況(糸張りダイヤル・フライホイールが懐かしい)
(画像にマウスを置くと画像が切替ります。)



 この受信機は、昭和30年代の初期、ST管の時代からMT管に移る狭間期に開発・製造されたものです。ST管からMT管に移行する間には、短期間でしたがGT管も存在していました。本機にも、GT管が1本整流管として使われています。
 また、八戸市は米軍三沢基地が近かったこともあり、米軍払下げのジャンク無線機があちこちの「ラジオ店」の店頭に並んでいました。
 その中には、軍事用として開発されたのでしょうか、堅牢なメタルチューブ(GT管)もジャンク品として、流通していました。
【HE-10の定格】※単位は昔風に c(サイクル)
 @ 周波数帯
   A;550〜1,600 kc B;1.6〜4.8 Mc C;4.8〜14.5 Mc
   D;11〜30 Mc
 A 中間周波数 455kc
 B 感 度 13μV (10McにてS/N20dbの入力)
 C 選択度 -60db (1Mcにて±10kc 離調時)
 D 出力電力 1.5W
 E 消費電力 50VA、50c/sまたは60c/s
 F 使用真空管(9球)
   6BD6(高周波増幅)、6BE6(混合)、6BE6(局部発信)、
   6BD6×2(中間周波増幅)、6AV6(検波、低周波増幅)、
   6AQ5(ANL、BFO)、6AR6(出力)、5Y3(整流)
 G 大きさ 横385×高さ200×奥行235mm
 H 重量 8.8Kg

受信状況は良好です。( 短波放送/AM 放送受信中! )【BGM】
●● 北京放送が流れますのでお聴きください。●●
 製造されてから、すでに半世紀以上もの時代を経ても今なお動作し、緩やかなフェージングを伴いながら「北京放送」がスピーカーから聞こえてくることに「遥かなるノスタルジー」を感じます。

9R42J修理 part-2 (9R42J 通信型受信機)
(画像にマウスを置くと画像が切替り、さらにクリックで 回路図pdf へジャンプします。)


 前回は米国Lafayette社の、HE-10 (TRIO 9R4J の輸出版)通信型受信機を、ネットオークションで落札修理・調整をしましたが、今回は正真正銘 9R42J そのものの修理と調整をおこないました。

 当然のことですが、SSBやCWの受信にはかなりのテクニック?が必要です。 BFOを動作させさてSSBとかCWを再生させるのですが、IF信号レベルとBFO信号のレベル・ビート周波数の微妙な調整が必要です。
 また、BFOの使用中はAGC回路は動作していませんので、Sメータは振れない状態となります。
 そんな訳で、SSBやCWを受信する場合はバンド・スプレッド・チューニング、AFゲイン、IFゲイン、そしてBFO周波数コントロールをかわるがわる頻繁に操作する必要があり、ユーザのテクニカルはかなりマニアックなものを求められます。
 この様に不安定極まりない真空管受信機を使いこなす喜びを見出せるかどうかで、「ラジオ少年」のマニアック度が伝わってきます、、。
PDFファイル ⇒ TORIO 9R-42J 回路図

シャーシー上面の配置状況(天板には開閉できる放熱用の蓋が付いています。)
(画像にマウスを置くと画像が切替ります。)

  今回もジャンク品を仕入れて、修理・調整を行いましたが、重篤な故障も無くダイヤルのメカ調整や、文字盤清掃のほか、指針の錆磨きなどのメンテナンスを実施しました。
 ダイヤル指針(鉄針)は、極細の紙やすりと車補修用のコンパウンドで磨きましたが、思いのほか上出来でピカピカに仕上がりました。
 ダイヤル指針がピカピカになると、受信機自体も新品になったような錯覚に陥ります、、。とてもとても、昭和33年(1958)製造の受信機とは思えません。
【9R42Jの定格】
※単位は昔風に c (サイクル)
 @ 周波数帯
    A;550〜1,600kc B;3.5〜7.5Mc C;7〜15Mc D;14〜30Mc
 A 中間周波数 455kc
 B 感 度 13μV ( 10Mcにて S/N20db の入力 )
 C 選択度 -60db ( 1Mcにて±10kc 離調時 )
 D 出力電力 1.5W
 E 消費電力 50VA、50c/sまたは60c/s
 F 使用真空管(9球)
    6BD6(高周波増幅)、6BE6(混合)、6BE6(局部発信)、
    6BD6×2(中間周波増幅)、6AV6(検波、低周波増幅)、
    6AQ5(ANL、BFO)、6AR6(出力)、5Y3(整流)
 G 大きさ 横385×高さ200×奥行235mm
 H 重量 8.8Kg
PDFファイル ⇒ TORIO 9R42J 取扱い説明書

各パーツの配置状況(糸張りダイヤル・フライホイールが懐かしい)
(画像にマウスを置くと画像が切替ります。)


【シャーシー上面の状態】
 下項に記載のSメータ文字盤の表記から、本器は1959年製と推定されますが、とても62年前に製作されたものとは思えない程、とても良い保存状態です。
 IFTコイルやトリマーコンデンサを調整し、受信感度の最良点を探すわけですが、懐かしい「ラジオ少年」が思い起こされます。
 受信感度の調整は、絶縁体で出来た専用のドライバで行なうのですが、工具自体も今は売られていないのかもしれません。参考まで写真を添付しますのでご覧ください。
 ※参考⇒IFTコイルの調整などに用いる“コアドライバー

【シャーシー下面の状態】

 本機/9R42Jは、キットと完成品の2種が発売されていたようですが、配線の仕上がり状態から推測するに、工場にて職人的な技術屋さんの手による製作ではないかと思われます。
 そう言えば、昔は半田付け技術の認定資格もありましたね、、。メーカー工場で働く人には必須資格だったような気がします。(今も有るのかな?)
 下面の配線仕上がりやハンダ付けを目視すると、明らかにその上手さが見て取れます、、。特にハンダ付けがきれいに施されています。

Sメーター(45φ丸型メーターのオリジナル文字盤が懐かしい)
(画像にマウスを置くと画像が切替ります。

※ ロールオーバー効果を組込んでありますので、画面にマウスを置くと写真が切り替わります。


 おもて画面は⇒TRIO製 9R42J のSメーターで文字盤に“TORIO”の記銘が有りますが、うら画面には⇒米国Lafayette社のHE-10 (TRIO 9R4J の輸出版)には記銘が有りません。
 9R42J は昭和33年(1958)から製造発売されましたが、Sメータ文字盤の右下に1959の表記が有るので、本器は1959年製ではないかと推定されます。
 また、SメーターはAGCが動作している時にのみ動作します。受信信号の強弱に敏感に反応し、ダイヤルのチュ−ニングにはとても便利ですが、メモリ盤と信号強度の相関は校正表でも無い限りはあまり期待できません。
 当然のことながら、SSBやCW信号を受信する場合は、BFOを動作させるためAGCは動作せずSメータも使えません。

ダイヤル文字盤(9R42JとHE-10の文字盤には微妙な違いがあります。)
(画像にマウスを置くと別機種/H10のダイアル文字盤の画像に切替ります。)



【ダイヤル文字盤の違い】

 9R42Jはアマチュア無線用の仕様となっているため、1,600kc〜3.5Mcの帯域が存在しません。
 その代わり、各バンド切替えスイッチ毎にアマチュア無線バンドが重複するように工夫されています。具体的には下記の様なバンド幅となっています。
@ 9R42J のバンドスイッチ帯域
  A;550〜1,600kc B;3.5〜7.5Mc C;7〜15Mc D;14〜30Mc
 一方、米国Lafayette社から販売された、HE-10 (TRIO 9R4J の輸出版)のバンド幅は以下のようになっています。
A HE-10 (TRIO 9R4J の輸出版)のバンドスイッチ帯域
  A;550〜1,600 kc B;1.6〜4.8 Mc C;4.8〜14.5 Mc
  D;11〜30 Mc
 SWLなどのリスナー用としては、バンド帯域が欠落していないので、本当の意味でオールバンド仕様ですね、、。 v(^_^)v

受信状況は良好です。( NHK第一放送/AM 放送受信中! )【BGM】
●●「昼の憩い」放送が聞こえますのでお聞きください。●●

 スイッチを入れて暫くしてから、ゆったりとしたタイミングでスピーカーからラジオ放送などの音声が流れ出ます。真空管式の受信機なので当たり前のことなのですが、昨今のテレビ、スマホの瞬時動作に慣れきっている日常では、もしかして故障かな?の違和感を感じます、、。 (^_^;)

 昔々の真空管時代は、受信機も、音響アンプも、電源からのハム音(リップル)のお土産音が付き物でしたが、本機はあまりハム音が感じられません。まだまだ電源部の平滑回路が健全な証拠です。
 古い真空管受信機から流れ出る、NHK第一「昼の憩い」のメロディーは何とも言えない、ノスタルジーの世界にタイムスリップいたします。
 今はやりのハイレゾなどより、こんな古い古い受信機から聞こえてくる、古関裕而さん作曲による懐かしいメロディーが何とも言えませんね、、。 v(^_^)v


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